2005年7月 1日 (金)

ホー

 昨日、6月30日、元ヤマト運輸社長の小倉昌男さんが逝去された。言わずと知れたクロネコヤマトの宅急便の産みの親である。今朝の毎日新聞に載った彼の語録から以下を、日本で自由診療をやっている全ての治療家に送りたい。
「時代の流れというものを知らない霞ヶ関の住人(役人)を哀れだと思います(中略)民間なんて金もうけのために何やるかわからんゾ、という前提でやってるんだけども、もうそういう時代じゃない。消費者は非常に賢くなっていて、運輸省よりも賢い。だから賢い人が目を光らしていれば、なにも賢くない運輸省が目光らせなくていいわけです」(カッコ内筆者)
 アメリカのジェネラル・エレクトリック社、元社長、ジャック・ウェルチさんのインタビューを、深夜、テレビで見る。以下にまた彼の言葉。
「頭の固い会社人間になっては駄目だ」
「ホー(aha)を見つけるんだ」
 ホーを見つけるとは? 新妻さんと自宅の近所を歩き回り、ホーっと感心するものを見つけては盛り上がるのだそうである。
 同番組中に出てきたものだと、まずピザ屋さん。ソースが「ホー」なんだそうであるが、これを70のウェルチが「気が利いているんだよ。本当に美味い」と目を輝かせて説明するその相手がダン・ラザー。多分アメリカで一番有名なブロードキャスターである。
 もう一つは、個人経営のドラッグストア。「サービスが細やかなんだよねぇ」とまた、ウェルチさん。いきなりマイク持ったダン・ラザーに踏み込まれた店主は驚いたろう。
 勝利の秘訣、人を楽しくさせて、自分を儲けさせ、さらには社会を豊かにするモノやサービスは、世の中、見る目をもって見れば、いくらでもソコラへんに転がっている。いい仕事をしたければ、上(役所、規制、上司、会社)なんか見ていては駄目。目の前(お客さん)を見るべきだ。
 ところで「ボクが80になる時、彼女が45で」とおっしゃるからには、彼の新妻さんって35歳? 3人目とのこと。
 その連想ではないですが、趣味は芸者遊びと公言されていた小倉昌男さん。ロサンゼルスの長女さん宅で亡くなられたそうですが、ロスではご趣味は満喫おできだったのでしょうか?



2005年7月 2日 (土)

中間テスト

 学院2年生は中間テスト。マネージはスタッフに任せ、ボクはオフとしてしまう。
 2日続けて仕事に出ないというのは、おそらく年末年始以来。無趣味ゆえ、時間の使い方に困る。



2005年7月 3日 (日)

今夜、東京ドームで

 朝から一日雨模様。午前9:30出勤。
 2年生の授業が終わった後、学校説明会まで少し時間があるので、小雨の中、五反田図書館まで歩く。日曜には多分、初めて来たが、さすがに混んでいる。といっても行楽地の行列などとは比較にもならない。中島らも『今夜、全てのバーで』を借りる。
 学校説明会でのQ&A。
Q「治療家が調子を悪くする、例えばギックリ腰などになった場合、自分で自分を治療できるものですか?」
A「治療には2種類あります。他動的治療と自動的治療です。施術者が患者さんに行ういわゆる「施術」が前者、患者さんが自分で自分に対して行うものが後者です。
 通常「治療」という場合、多くの人が他動的治療のことを指します。が、大川学院は自動的治療の重要性を強く説きます。
 痛くなってしまった場合、それをしっかり治すことは、もちろん大切です。が、痛くならないようにすることの方がより大切であることは論を待たないと思います。自動的な治療とは体操や、姿勢や動作への配慮などです。大川学院ではマッケンジー・セラピーをはじめ、自動的治療のプログラムを多く学んでいただくことになります。これらはそのまま、仮に治療家自身が調子を崩した際の、自己治療に使うことができます」
――――
Q「年輩の患者さんには、膝を傷めていらっしゃる方が多いように思います。こういった障害は、カイロプラクティックによって治療できるのでしょうか?」
A「できます。
 年輩者の膝の痛みは、多くの場合、変形性膝関節症というものによります。長年の酷使によって膝の軟骨が削れ、骨と骨がぶつかって痛むものです。
 カイロプラクティックで軟骨を回復できるか? 残念ながらそれは、カイロプラクティックを含む、いかなる治療によってもできません。が、それにも関わらずボクらには患者さんにしてさしあげられることがいっぱいあります。
 一例を挙げれば、膝をまたぐ多くの筋肉の緩和操作です。痛みのために筋肉が緊張していると、それだけで関節面同士がぶつかり合い、症状を悪化させます。筋肉が弛むことによって痛みが和らぎ、関節症の進行も遅らせることができます。
 カイロプラクティックは背骨の矯正・調整術としてスタートしたものです。が、今日ではそれにとどまらず、多くのアプローチを内包しているのです」
――――
Q「学校内での背骨の矯正の練習中、事故を起こして障害が残るようなことはないでしょうか?」
A「現在までのところ、そういったケースは皆無です。実技練習にあたっては厳格なルールが、学内に、設けてあります。これに従えば、そうそう大きな事故は生じるものではないと考えます。
「ルール」の例を、一部、以下に列挙します。
・いかなる実技練習も、インストラクターの監督のもとでしか行ってはならない
・ある手技を練習するにあたっては、正式な講義を受けた者同士でしか行ってはならない
・受術者は、施術者の手技に違和感を覚えたら、ただちにそれを声に出して指摘しなくてはならない
 しかしながら、練習の過程で、ちょっとどこかが痛くなってしまった程度のことは、正直に申し上げますが、時としてあります。そしてそれは不可避です。
 何故なら手技療法の実技は、スポーツと同様、練習を繰り返すことによって体で憶える以外に、修得することが不可能なものだからです。最初は誰でも下手ですから、時には痛い思いをすることがあります。
 この「痛い思い」を恐れるあまり、実際の手技練習を行わず、型だけの学習に終止する学校もあります。が、これでは上手くはなりません」
――――
Q「カイロプラクターが患者さんから医療過誤で訴えられた場合、賠償は全て自費で行わなくてはならないのでしょうか?」
A「そんなことはありません。複数の民間の保険会社が、カイロプラクターのための賠償責任保険を運営しています。が、個人の資格でそういった保険に加入することはできません。保険会社としては、ある程度、人数がまとまらないと、ビジネスが成り立たないからです。
 弊校の卒業生は全員、日本カイロプラクティック医学協会(JACM)への加入権を与えられます。JACMは様々な活動を行いますが、人数をまとめて保険へ加入することもその重要な一つです」
――――
Q「4月生と10月生は合同授業を受けるのですか?」
A「はい。例えば去年の10月生は今年の4月生と、今年の4月生は今年の10月生と、約半年間、机を並べることになります。4月から9月までを前期、10月から翌年3月までを後期と呼びます。
 前期の授業を受けていないと後期の内容が理解できない、ということでは困りますよね。が、そういうふうにはなっておりません。前・後期は、実技も座学も、それぞれ独立した内容を扱いますので、どちらを先に初めても構いません」
 長嶋茂雄さん、久しぶりにファンの前に姿を現す。誰でもだ。お元気なことは喜ばしいことだ。
 夕食=トンカツなど。



2005年7月 4日 (月)

人さらい

 また朝から雨。午前9:14、ボクの利用電車が通過する、とある駅で人身事故発生。その影響により途中駅で1時間弱、待ち停車となる。
 が、多くの乗客が他の路線に乗り換えたため、車内はむしろ閑散とし、涼しく『今夜、全てのバーで』を読む。去年他界した中島らもさんが、35歳の時にアルコール中毒で入院した際の体験記である。
 1年生の授業に、学院五反田直営院院長、成木くんが、予告もなく顔を出す。何をしにきたのかは、実はボクには分かっている。今度、治療院でスタッフが一人辞めるので、その補充のための人間を物色に、である。人さらいだ。
 キミらはいいねぇ、そういうことができる環境で。ボクが自分で開業していた頃、人が辞めちゃう度にどれだけ面倒な思いをして求人活動をしたことか。
 ギックリ腰で戦線を離脱していた、やはり直営院(にしくぼ院)の峯岸くんも、サブインストラクターとして復帰。
 1年生の実技は脊柱起立筋の触診と押圧。脊柱起立筋とは? いわゆる背筋(はいきん)、背骨を「立て」る筋肉である。肘打ち、母指押圧、「くぎ打ち」という3つの方法がある。 
 夕食=夕方に鳥タルタルソース丼、温野菜のサラダ。サラダは賞味期限切れ直前で2割引きになった。



2005年7月 5日 (火)

開業場所選び

 朝食に思い切ってカトキチのうどんを食べてみる。が、どうしても、昔、四国に出張した折りに食べた、あのツルツルシコシコにならない。ちょっとしたコツの違いだろうとは思うんだが、美味いうどんの作り方、あるいはうどん屋さん、誰か知らないだろうか。
 午前10:30出勤。曇り。いいねぇ、涼しくて。
 2年生の授業は、「開業場所選び」について。いやぁ、皆さん、とうとうそういう話をするところまで来たんですねぇ。治療院を成功させるため、どんなことに気をつけて不動産物件を探せばよいのか、という話です。
 まず高層マンション街と低層住宅街と、どちらがいいでしょう? 答えは、低層住宅街です。
 高層マンション街の住人の典型例を描写すれば、子供がまだ小さい、若い共働きの夫婦でしょう。若いんだから、まず体はあまり不安がない。
 時間は? ない。働き盛りっすから。
 お金は、あるかもしれないが、勝手に使えない。住宅ローンをかかえた上、子供が私立にでも入った場合の学費として貯めておかなくてはなりませんから。
 その他、店舗は1階がいいのか、上階がいいのか? 駅前がいいのか否か? 賑(にぎ)やかな通りに面していた方がいいのかどうか? 面積は? 月テナント料の基準は? 保証金の相場は? 不動産屋さんとどうつき合うのがいいのか?
P1010028 などなど盛りだくさんの内容である。システム・コンサルティング会社にいた頃のプレゼンのノリそのままで一気に講義終了。分かった、みんな?
 夕方に五目おにぎりと、サーモンサンドを、大川学院はす向かいのお弁当屋さんで買って、学生の練習をみながら食べる。サンドイッチってのはそもそも、こうやって食べるために考案された、んだったよね?
 夜になって雨が降り出す。夕食=鳥の唐揚げ丼。



2005年7月 6日 (水)

杜の公園

2005_07_06_caplio_016 品川駅から、初めて、西口に出ずに東口に出、杜の公園を抜けて出勤してみる。学院まで30分ほどかかるが、人がいなくて気持ちがよい。
 通常、往復3時間の通勤うち、2時間は電車内で読書、1時間は歩いている。これほど体と心によいものもないのではないかと思う。
 満員電車の中で本が読めるか? 無理でしょうね。だから満員にならない時間帯に出勤する。また自分の仕事についての惚気(のろけ)になってしまうが、自営業者はそれができるから素晴らしい。
 ブログのネタのほとんども、通勤途中、歩いている間に思いつく。J・J・ルソーは「歩いている時だけ思索できる」と言った。足裏への刺激が大脳を活性化させる結果、などと説明されることが多い。足裏への刺激ばかりがどうして大脳を活性化させるのかは、よく分からないが。
 中島らも『今夜、すべてのバーで』は昨晩、読み終わる。アルコール中毒で入院した著者が、退院するまでの物語。ラストはハッピー・エンディングに近い仕上げである。
 が、著者が知らないことを、読者であるボクらは一つ知っているわけで、それは彼が、この手記にある体験の時点から18年後、53歳で、やっぱりアルコールが原因で亡くなってしまったことだ。18年ももった、18年しかもたなかった――著者本人ならこれをどちらとみなすのだろうか。
「退屈がないところにアルコールがはいり込むすき間はない」(同書<四>内)
 経験に照らして、非常にヒットするコメントだ。というわけで何か、面白いことありませんか、Fさん(学生)?
「温泉に行って来ました。湯河原。平日で空いていてよかったですねぇ~」(F)
うわ~、また飲んじゃいそう。
 1年生の授業。解剖学は菱形筋と僧帽筋。いずれも肩こりの「原因筋」である。実技は早速、これらの筋へのアプローチである「腕とり」。
 夕方にフレッシュネス・バーガーのおやつ。夕食=カツ丼など。



2005年7月 7日 (木)

七夕

2005_07_07_caplio_006 写真は利用駅のホームにて。午前10:30出勤。
 2年生の講義は、まず開業場所選びについての講義をフィニッシュ。その後で、脊椎奇形についての講義。さらにその後の松浦さんのワンポイント・レッスンは「筋力強化による姿勢改善」。密だ。
 ボクらカイロプラクターは、不動産のオーナーさんにとっては非常に「よい」テナントである。何故か?
 まず飲食店のように調理をしないから、臭いを出さない。火を使わないから、火災の可能性も低い。
 お客(患者)さんは中年以降の方が多いのであって、子供や若者はあまり出入りしない。だから静かである。
 大動力の機械を使わないから、ヒューズをとばして他のテナントに迷惑をかけるなどということがない。配電盤を代えてもらう必要もない。
 一日の売り上げなんて、多くても十万円ちょっとだから、大金を保管するということがない。結果、ピッキングや強盗にあいにくい(同ビル内でそういうことがあると、他のテナントは動揺する)。
 病院と治療院はずいぶんと違う存在なのだが、素人さんの多くは、その区別までは気にしない。だからオーナーさんとしては「今度ウチに病院が入って」と、近所の人に言える。これは彼にとってはステータスだ。
 よって、開業場所探しにあたっては、不動産仲介業者さんやオーナーさんに、われわれの仕事についてありのまま、誠実に、説明することは、自分のためになる。いい仕事でしょ? 隠し事しなくていいんだから。
 リクエストが届いたとのEMを受け、五反田図書館へこれらを取りに歩く。アウグスティヌス『告白』、中島らも『今夜、すべてのバーで』を返す。
 中央公論社・世界の名著シリーズの作品解説は、いつも非常にうまくまとまっていて重宝する。『告白』およびアウグスティヌスのそれも、よく分かった。4~5世紀の古代ローマ帝国市民で、古代キリスト教最大の神学者・哲学者と呼ばれる人だ。
 これだけ予備知識を入れた上でならイけるか、と思って『告白』本編に入ったが、冒頭いきなり「偉大なるかな、主よ。まことにほむべきかな。汝の力は大きく、その知恵ははかりしれない」とこられて、たまらずダウン。何とか1ページは読み通すも、何としても3ページまでは進めず、TKO負けを喫す。修行して出直してきます。
2005_07_10_caplio_002 帰途、時間があったので、学院から杜の公園経由で品川駅まで歩いてみる(写真)。





2005年7月 8日 (金)

日本一のアル中男

 昨日図書館で借りた邦山照彦『アル中地獄』を読む。著者は、同書中の紹介によると、「青年実業家として成功」した後「事業に失敗」し「アル中で精神病院入退院36回の日本最多記録を達成」した「日本一のアル中男」さんである。「日本一」って、邦山さん、本当のチャンピオンは皆さん、お墓の中でしょう。
 感心したのは、同書中にも、そしてこの間読んだ中島らもの『今夜、すべてのバーで』にも、実に頻回に「ワンカップ」が登場すること。ワンカップとは? 大関株式会社の販売する、180ml入り、アルコール度15%の日本酒である。電車駅のキオスクをはじめ、コンビニでもよく見かける。商品名だから固有名詞であるはずだが、これがまるで普通名詞であるかのごとくに出てくる。
 さて、オフ。みなとみらい駅すぐ近くの住宅展示場、横浜ホームコレクションへ行く。実に楽しい。
「新築のご予定は?」
ありません。スミマセン。
 近所にはABCマート、スポーツオーソリティーなど、ボク向けの店舗も多く、また空き地などがまだまだ広がっていてスペースに余裕があり、気持ちがよい。少し歩けば山下公園、中華街だ。
 夕食=ステーキ(ビーフおよびラム)など。



2005年7月 9日 (土)

レクサス

2005_07_10_caplio_003 午前10:40出勤。過ごしやすい曇り。
 写真は品川駅前に8月オープン予定のレクサスのディーラー。レクサスとは? トヨタの高級車ブランドだ。
 高級車だけを別ブランドに仕立てて売るというこの販売戦略は、アメリカで15年ほど前に始められ、今では完全に定着している。それがこのほど逆上陸する次第だ。
 レクサスがあっちで出始めた、ちょうどその頃、ボクはアメリカのカイロ大に行った。初めてあのLマークを見たときは、あまり感心しなかった。レクサスだからLって、芸が無さ過ぎやしないか。メルセデスがMのマークとか、BMWがBのマークとか使うだろうか。
 が、それもつかの間、あれよあれよという間にブランドが確立し、今ではあのLが、ちょっと車を知っている人なら誰しもの憧れと畏敬の的である。そう思わない人は、もう、車を知らない人、とボクは勝手に思っている。これは企業の実力の賜物だ。中身良ければ全て良し。
 2年生の授業は、脊柱側弯症に入る。脊柱側弯症とは? 背骨が横に彎曲してしまったものをいう。種類は実に多い。
 機能性側弯と構築性側弯とは厳密に区別されなくてはならない。前者は椎骨(背骨を作る一つ一つの骨)そのものの形には何の問題もないもの。後者は、椎骨が変形した結果、脊椎(背骨)が曲がるものである。
 夜になって雨。
 夕食=鰻丼など。



2005年7月10日 (日)

頸椎症とは何か

 午前9:30出勤。また蒸し暑いね。
 2年生の準本科はまず冒頭に中間テスト。その後、通常授業。
「Nさん、何か変わったことでもありましたか?」(ボク)
「いや、美智子さんが頚椎症だというのが気になりまして――」(学生Nさん)
 そういう意識をもってニュースを見るのは非常にいいことです。聞かれますよ、患者さんから、頸椎症って何なのか?
 だからコツはね、そういった話題に接する度に、患者さんからそれについて聞かれたと想定して、素人さんにでも分かる言葉で専門用語を説明する練習をするんです、普段から。Sさん、頸椎症を説明できますか?
「えー、椎間板の退行変性に基づいて骨棘(こつきょく)が形成され、それが脊髄や神経根を圧迫し――」(Sさん)
 椎間板とは? 椎骨(背骨を形作る一つ一つの骨)同士の間にある軟骨性のクッションですね。
 退行変性とは? これも患者さんに向かって聞くんです。あなたの肌は18の時ほどすべすべツルツルですか、と。
 そんなはずは、普通は、ない。で、それと同じです、という話をするわけです。椎間板だって加齢にともなって水気を失い、背が低くなってきます。すると椎骨同士が、日常の動作にともなって、ぶつかり合うようになる。
 骨同士がぶつかり合うと、その部分はへっ込む、と思うでしょ? 違うんだなぁ。
 空手家の拳(こぶし)を見てください(って、そうそう身近にあるものでもないが)。出っ張ってるでしょ。ガンガンぶつけられると、体は「負けまい」として逆に盛り上がってくるものなんです。反応性骨増殖なんていうんですけどね(と、要所要所に専門用語をちりばめるのもテクニックである)。
 骨棘も同じです。これは、細った椎間板をサポートしようという、体の自然な反応です。それそのものは悪いものではないし、実際、骨棘によって背骨は安定します。
 し、か、し、です。背骨の中には脊髄(神経の束)が入っている。脊髄から分かれて体のあちこちに出て行く神経根も、その近所にある。これらが骨棘によって圧迫されるのが玉に瑕(きず)です。これは痛い。
 また、頚椎(背骨の首の部分)から出た神経の大部分は腕に入っています。結果、手に力が入らなかったり、腕がしびれたり痛かったり、といった症状が現れてきます。これこそが頸椎症の真に厄介なところなんです。
 と、このぐらい説明できれば、患者さんの皆さんに対する信頼も倍増すること請け合いだ。
2005_07_13_caplio_001 写真は、2年生の準本科授業を行うりらっくすステーションのスタッフルームにて発見。元気あるねぇ。
 説明会のない日曜日であるので、午後5時前には学院を出る。夕食=ミートローフなど。




2005年7月11日 (月)

チューちゃん!

 午前10:20出勤。また暑い。
 邦山照彦『アル中地獄』は、昨日読み終わる。医学用語としては、現在では、アルコール中毒とは言わず、アルコール依存症と言う。
 が、邦山さんは前者とその略であるアル中という呼び方の方を好むとしている。理由は「依存という相対性よりも、中毒という合一性の方が、病状にぴったりするから」とおっしゃるのだが、これがボクには、ちょっとよく分からなかった。が、「アル中」の方がいいじゃないかという結果については、ボクも同意見なのだ。
 飲酒の際の表現として、よく「キューッと」飲む、という。あれはいったい何なのか? お酒を飲むとどこからか、そういう音が聞こえてくるのか? 飲酒ベテランのボクが聞いたことがないのだから、多分そういうことはないのだろう。
 擬音語でないとすれば擬態語か? だとすると「キューッ」とはいったい、どのような様(さま)を表すのか? ボクの仮説は以下だ。
 日本語は伝統的には拗音を嫌う。拗音とは? 「きゃ、きゅ、きょ」「ちゃ、ちゅ、ちょ」などだ。
 ちょっと情けないものや、ふざけた気味のあるものに、日本人は拗音をあてがってきた。オバケのQ太郎、チョッチュレーッ(知らない?)、チョンワチョンワ(もっと知らんか)、などなど…。善し悪しを言っているのではない。そういう伝統がある、と言っている。
 さて「キューッ」もその一種ではないか。飲んだって何がどうなるわけでもない。それでも飲まずにおられない。というこの情けない状況の表現ではないのか。
 この流れでいくと、やっぱりアルコール依存症や、その略語であるアル症より、アル「チュー」というあの響きの方が、その方面の問題をかかえた方々を表す日本語としては、似つかわしくはないか。
『ダラス』という、20年以上前にアメリカで大流行したテレビドラマがある。その一エピソードの一シーンに、こんなのがある。お化粧バッチリいけいけマダムが、ミスター・ダンディー氏と食事を摂っている。
「誰かと一緒にいて欲しいの。アルコール依存症がひどくって」(マダム)
「分かった。今晩はずっと一緒にいよう」(ダンディー)
 一緒にいるとアルコールの誘惑を克服できるのか? そうかも知れないが、そうでないかもしれない。気まずさに耐え切れず、あるいは会話が盛り上がって、飲んじゃうってセンだって充分に考えられよう。
 つまり、そんなこと(一緒にいるいない)は本質的ではない。酒害者がすべきは、ひたすら、自分の内奥を見つめ、その弱さに気づくことなのだ。
 これも、アルコール「依存症」なんていう、結核か白血病と同列の響きがある、偉そうな病名を使うところから勘違いが始まるわけだ。だから上の吹き替えの翻訳も、以下のようにするとよりよいのではないかと思われる。
「誰かと一緒にいて欲しいの。アル中がひどくって」(マダム)
「ああ、それならいい病院を紹介するよ。じゃ失礼」(ダンディー)
おいこら、勝手にセリフまで変えるな。
――――
 学院1年生の授業。解剖学は三角筋、肩甲挙筋、棘上筋。
 三角筋は肩の丸みを作る筋肉。あとの二つは、ちょっと分かりにくい。だからこそ起始・停止をしっかり憶えなくてはならない。
 その後すぐ、それらの筋肉の触診と押圧の練習。
 夕食=グラタンなど。



2005年7月12日 (火)

脳幹出血とは何か

 午前10:20出勤。曇りのせいで、やや涼しい。曇れば涼しいのなら、ずっと曇っていて欲しい。
――――
 昨日のニュース。アントニオ猪木さんが新しい団体、WXF世界総合格闘技連盟、を旗揚げしたとのこと。62歳。
「おれたちの売りは元気。ダ~ッハッハッハ!」
 ってそれ、ホントにそう言ったのか? だとしたらきわめて新しい。ダーから笑いに入るというのは。これを東京ドームでお客さんと一緒にやるっていうのを、是非見てみたい。
 猪木さんという人は、ボク世代には常に「憧れのお兄さん」であってきた。例の対モハメド・アリ戦が、ボクが中学1年生の時である。第2伸長期時分の心身ともに未熟で不安定なボクにも、また今、中年になったボクにも、等しく元気を与え続けてくれているというのは凄い。 
――――
 と、おめでたムードで今日の記述を終わろうと思っていたら、そうもいかなくなってしまった。その猪木さんの愛弟子の一人、元新日本プロレスの橋本真也さんが、昨日、亡くなる。脳幹出血。40歳。
 脳幹とは? われわれが物事を考えたりするのは、脳のうちでもほんの表面の皮一枚、その名も大脳皮質と呼ばれる部分である。その大脳皮質の下、つまり内側に、食欲やら性欲やらを司る古皮質と呼ばれる部分がある。脳幹とは、さらにまたその内側で、呼吸、嚥下(物を飲み込むこと)、発汗などといった、基本的な生命の維持を司る部分、まさに生命維持装置である。
 その脳幹の動脈が破裂してしまうのが脳幹出血だ。流れ出る血の固まりによって脳幹が圧迫され、その機能を失い、最悪の場合、死に至る。
 何故、脳幹の血管が破裂するのか? 最大の要因は高血圧症である。
 高血圧症とは? 血中の余分な脂肪(コレステロール)が、動脈の壁の内側に張り付く。結果、血管壁は硬く、血液の通り道は狭くなる。全身の血液量が変わらず、その通り道はあちこちで狭くなっているわけだから、血圧(血液が血管の壁を内側から押す力)は上がる。
 柔らかい物は、すぐに撓(しな)るけど、なかなか折れない。硬い物は、なかなか撓らないけど、ある限界を超えるとすぐに折れる。硬化した動脈も同じだ。高まった血圧によって破裂してしまう。
aaaaaaaa 高血圧症は、脳出血のみならず、脳梗塞や心筋梗塞の最大の原因でもある。狭くなった血管が遂には完全に閉じる(塞栓症)、あるいはそこでできた血の固まりが剥がれ、どこか別の血管を詰まらせる(血栓症)。いずれにせよ血管が詰まると、そこから先の部分の組織が死んでしまう。
 これが梗塞と呼ばれる現象である。脳に起きれば脳梗塞、心臓に起きれば心筋梗塞だ。大きな心筋梗塞は心臓を停止させ、人を死に至らしめる。が、小さな心筋梗塞なら心臓の機能を阻害する程度で済む。後者の場合、不整脈(脈がリズムを外すこ)が見られるようになる。
 以上、脳出血と高血圧症についての概説であった。さて、橋本さんについて考えてみよう。
 まず高血圧症であったのではないか、と思われる。パワーファイターとして、とりわけ大きな体を作り、維持するために、大食を常としたであろうことは想像に難くない。余分な脂質が動脈を硬化させる。生前、不整脈を訴えていたというが、これは高血圧症による心筋梗塞の気があったことを示しているだろう。
 精神的ストレスも、交感神経を興奮させ、血圧を上げる。
 報道によると、橋本さんは事務所経営に失敗し、億単位の借金をかかえていたという。また、この3月に離婚されていたもののようである。借金が原因なのかどうか、そこまでは分からない。いずれにせよ、ストレスは相当に高じていたと思われる。
 また、出血しやすい脳動脈の構造というのは、遺伝的に決定されている場合が非常に多い。これも今回の報道で知ったが、橋本さんのお母さんも50歳で、脳出血で亡くなっているそうである。彼がその傾向を引き継いでいた可能性は極めて高い。
 さてこのように、高血圧は様々な成人病の共通の原因であるので、普段から予防的措置をとっておくことが非常に大切である。具体的にはどうすれば? 月並みになってしまうが、まず過食を避け、軽い運動を心掛けるべきである。
 運動としては、ボクは常々、通勤や買い物を利用しての散歩を勧めている。毎日、そして何年も、続けないことには意味がほとんどないわけだから、何かの「ついで」に歩くように習慣づけるのがコツであると考える。あちこち眺めながら歩くことは、ストレス解消にも役立つ。
 …。
――――
 学院2年生の授業は、思春期側弯症についての講義がメイン。10代の女性に多い、原因不明の構築性(骨そのものが曲がる)側弯症である。発症割合が高く、われわれ手技療法家が相談を受けることも非常に多いものである。
2005_07_13_caplio_003 帰りは学院→ソニー通り→八ツ山橋と歩き、今晩は杜の公園には入らず、JRの線路沿いに品川駅まで歩いてみる。写真は駅近く、品川イーストワンタワーの1F。
 夕食=鰻丼など。



2005年7月13日 (水)

ダイヤモンドは――

2005_07_13_caplio_0042005_07_13_caplio_005 品川から学院まで、裏道を歩いて出勤。こんなのがあるのか! あるんですねぇ。
 迷わず行けよ。行けば分かるよ。
――――
 読者は最近、カメリアダイアモンドのテレビ・コマーシャルを見ただろうか? 冒頭いきなり
「離婚して世界が広がった」
とくる。
「そらそやろ、アンタみたいな美人なら!」
と、やっさんなら突っ込むであろう。ビジンの「ジ」にアクセントがあるのがミソである。
 ダイアモンドの宣伝といえば「結婚」指輪を楯にとるのが定石であるところを、ワザとひっくり返してみせてるわけね。ヒネリが効いていて面白い。と、思っていたら、あれ、離婚じゃなくてやっぱり結婚なんだそうである。
 しかし何度あのコマーシャルを見(聴い)ても、BGMにかぶってしまっていることもあり、「結」か「離」か判然としない。これはもしかして、見る側に解釈の余地をもたせるよう、わざと聴き取り難く作ったってことか? 結婚したい人も離婚したい人も、なんでもいいからダイアモンド、買って下さい、という。
 などと思っていたら、最近出た同CMの第2弾「モトクロス編」(前回はボクシング)では、ちゃんと「結」婚と聞き取れる。ちょっと――つまんないなぁ。こうなったらもう、第3弾は「あの人」に「キックボクシング編」やってもらうしかないでしょう。
「結婚も離婚もサイコーじゃん」
と繰り出す上段回し蹴りがパカーンと決まるやいなや、選手にも見えないようなスピードで廣戸聡一レフェリーが割って入り
「ストーッップ!」
試合終了。
 勝ち誇る「あの人」が最後に一発
「かおるやダイヤモンド」
なんて、泥酔しなきゃ言えないようなオばジギャグを飛ばしてエンド。どうっすか、カメリアさん、やってみませんか?
――――
 学院1年生の授業は、まず解剖学。棘下筋、板状筋、胸鎖乳突筋。いずれも肩こりや、それが高じての頭痛の原因として重要なものだ。
 続いてR1手技の練習。今日で遂に最後までカバー。次回の金曜が総復習で、来週月曜が海の日で休みで、その次、水曜に実技テストです。みなさん、頑張って下さい。
 夕食=豚のショウガ焼きなど。



2005年7月14日 (木)

日米の暮らし

 午前10:30出勤。
 11時過ぎ、松浦さんの後輩でアメリカのウエスタン・ステーツ・カイロプラクティック大を卒業したばかりのAさん、訪ねて来る。日本に帰ってくるべきか、あっちでやってゆくべきか、悩んでいる模様。どっちがいいのか。
 あっちの消費者物価は、ざっと日本の半分だろう。例えばガソリン。あっちの1ガロン(3.8リットル)とこっちの1リットルがほぼ同じ値段である。つまり日本はアメリカの4倍ほど。
 また、5千万円も出せば、ボクのいたシカゴ郊外でも、庭で馬を飼えるような家が手に入る。同じ収入があるなら、間違いなくアメリカでの方がいい暮らしができよう。
 が、仕事は? よく言われるようにあっちは訴訟社会だ。なんだかんだ言っても、国籍を持っていない外国人の立場では、いざという時には弱いのではないか。
 また、1ドルが200円とか300円とかだったりした頃は、あっちで一財産築けば、それを持って日本に帰って来て、後はのんびり暮らすということができた。が、今やあっちでワン・ミリオン・ダラーズ(約1億円)貯めて帰って来ても、それで余生を――というにはちょっと心許ない。
 などなど、まあ一長一短なわけで、最終的には人生観ですね。どういう環境で働き、暮らす、どういう自分でありたいのか。誰を相手に活動し、どの社会に貢献したいのか、とかいう、ね。
――――
 学院2年生の授業は斜頚に入る。続いての松浦さんのワンポイント・レッスンは『ブロッキング・テクニック』。ブロッキング・テクニックとは、くさび形の専用「ブロック」を腰の下に入れて患者さんにうつ伏せになってもらい、骨盤のゆがみを矯正するとされる方法である。Aさんも見学してゆく。
 夕食=オムライスなど。



2005年7月15日 (金)

本でも――

 オフ。暑いのであまり外には出ず、図書館で借りてきたジョン・キーツ『ハワード・ヒューズ』、佐藤正明『ザ・ハウス・オブ・トヨタ』を読む。
 豊田グループ2代目にしてトヨタ自動車創業者の喜一郎と、ヒューズとは10歳違い。ほぼ同時代人と言ってよかろう。
 夕食=カレーライス、タコサラダなど。



2005年7月16日 (土)

バイオメカニクス

 午前10:20出勤。曇りだが、非常に蒸し蒸ししている。心なしかコンタクトレンズも朝から曇るような感じである。
2005_07_16_Caplio 写真は品川プリンスホテル裏の、水族館、映画館がある辺り。水族館に並ぶお客さんの日避け用にパラソルが立った。気が利いている。
 2年生本科の授業。講義は斜頚を終わり、胸郭出口症候群に入る。
 胸郭出口症候群とは? 肋鎖間隙(第1肋骨と鎖骨の間)付近には、頚椎から出た神経、動脈、静脈が密集する。この神経、血管の束を、神経血管束と呼ぶ。肋鎖間隙が何らかの原因で狭(せば)まると、神経血管束は絞扼(こうやく。締めつけられること)を受け、様々な障害が起こる。
 例えば? 神経血管束は主に上肢(腕)に入る。よって、腕の痛み、しびれ、脱力感などが、肩こりと同時に生じる、などといったことである。これが胸郭出口症候群(Thoracic Outlet Syndrome=TOS)。非常に多くの肩こりの原因となっている。
 神経血管束の絞扼の原因は、肋鎖間隙の狭小化以外にも、いくつかある。それぞれに適した対処をしなくてはならない。ということで、まずその区別、区別のための検査法、までだね、今日は。
 後半の実技の枠では、1年生時に習ったテクニックの総復習をやっている。こっちのキーワードは「基本」である。
 体の作りは、治療家によってそれぞれである。だから、治療家たるもの、誰しもいつかは基本を離れ、自分のカタチを見つけるべきである。また、殊更(ことさら)そんな意識を持たなくても、これは自然とそうなるものでもある。
 が、標準的な肉体の、人間一般にとって、一番合理的なカタチっていうのはどんななの? と問われたら、それを説明でき、かつ実際にやって見せることができなくてはならない。何故か? 人を雇う場合、その人が、自分と同じような体を持っているとは限らないからである。
 自分と違う体を持った者、場合によると自分を越える素質を持った者に対して、「オレはこれでやってきたんだから、お前をそれを真似れば上手くいくはずだ」式の指導をしていたのでは駄目。人が育たない。人が育たなきゃ、治療院の経営も、当然、安定しない。
「基本」とは「万人向け」ということである。どんな体格、体質、体技の癖を持っていても、人間である限り、この形が最も合理的であるような形。これが基本的な形だ。これができていると、人に教える場合のみならず、自らがスランプに陥った際の、自分の手技の見直しにも必ず役に立つ。
 だからバイオメカニクスです。バイオメカニクスとは? 訳せば、生体工学あるいは人間工学。制限のあるヒトの肉体をどのように使えばより合理的な動きができるか、ということである。
 合理的である、とは? 2フレーズに集約できる思う。
「同じ筋力を使うので、あればより強い力が出ること」
「同じ力を出すのであれば、より少ない筋力で済むこと」
 そのようなことを可能ならしめるポジション、肢位、型についての理解があり、そういったポジションが施術の中で自然に出てくること。これが「体ができている」ということである。
 だから土曜の後半、これをやる時間には
「ボク的にはこっちの方がいいんですよねぇ」
とかは言いっこなしだ。しかし、
「バイオメカニクス的には、こっちの方が合理的ではないですか?」
などという議論ならオールウェイズ・ウェルカムである。
 夕食=ポークステーキなど。



2005年7月17日 (日)

四十にして

 午前9:30出勤。日曜朝一番の仕事は、いつものように、準本科2年生のための教材のチェックを、スタッフの長谷川さんと一緒にやること。
 授業前、夏休みの注意事項についてのプリントを配布。学院は8月いっぱい夏休みである。が、予約を入れれば自由練習やビデオ学習が可能だ。でも予約は7月中に入れてね、とのアナウンス。
 夕方、五反田図書館へ。クセノフォン『ソクラテスの思い出』を返す。
 ベンジャミン・フランクリンがこれを読んでいたく感銘を受けたというんだけど、うーん。クセノフォンが本職の哲学者でないだけに、ソクラテスの口を使って自分の哲学を語らせるプラトンの著作より、ソクラテスのことがよく分かる、といわれるんだけど、うーんっっっ。
 正直言って、よく分かりませんでした、何がいいのか。友達を大切にしろよとか、神を敬えよとか、でも神頼みだけじゃいけないよとか、贅沢はいかんぞとか、そんな、ありきたりといえばあまりにありきたりな、オっさん的オ説教のオンパレード。
 が、そのどこか、行間に天才の閃(ひらめ)きみたいのがあるはずだ、と思って目をこらすんだけど――。また修行して出直して来ます。ボクってもしかしたら、思っていた以上に頭、悪かったのかなぁ。
 まあしかしどんな本にも、「おおっ」と心の中でうなる一文ぐらいはあったりするもので、本書を読んだボクの場合、それは、情けないことに解説中の、「アクメー」についての記述であった。アクメーあるいはアクメというと通常、「性的な絶頂」という意味で使われるが、語源のギリシア語では「人生の絶頂(期)」という意味だったそうである。
 具体的には2つの定義があって:
①人生において最も大切な事件が起こった年
②40歳時
とのこと。例えばクセノフォンは生没年が不詳なのだが、紀元前400年に傭兵になって戦争に行っている。だからこの年が彼のアクメーである。で、その頃40歳ぐらい「だろう」から、逆算すると生年は紀元前440年頃か、などというわけだ。
 つまり40歳を、男として(古代ギリシアの話だ。女は人間扱いされていない。ボクがそう言ってるじゃなくて、この頃の人たちがそう考えているんだからね)のピークと考えているわけである。
 生理学を勉強すればするほど、どうやら人間の肉体のピークは20歳ぐらいのようである。社会生活には体だけでなくて頭もコネも必要だから、社会人としてのピークはその倍の40歳ぐらいってことになろう。で、それをピーク、つまり折り返し点として、そのまた倍の80歳ぐらいで上がるというのが、寿命が延びた昨今の標準的人生ということになろうか。
 この間、図書館に返したモムゼンの『ローマ史』も、長いこともあり、とてもじゃないが読み通すには程遠かった。誰かが言ったという「だれでも、古代史を学ぶ者はモムゼンの弟子である」という有名な言葉につられて借りたが、自分で買っていたとしたら相当に悔しい思いをしただろうこと間違いない。なにせ、全編に対してなら、10分の1も読めていないのだから。不出来な弟子でスイマセン。
 で、こっちの「おおっ」の一文は、カエサルに関する表現
「誰にも自分に影響を及ぼすことを許さず」 
 かっこいい。そういえば「40にして惑わず」とも言うな。自身省みるに、しかし、それも程遠いなぁ。
――――
 午後6時より学校説明会。
Q「カイロプラクティックは、背骨だけでなく、膝や足首なども治療の対象としますか?」
A「します。昔のカイロプラクティックは背骨の矯正一本やりでした。が、今日の(近代)カイロプラクティックは、もっと包括的な治療を目指します。
 患者さんのニーズに合わせて、それこそ何でもやりますね。実際、膝を中心とする足腰の不具合を訴える患者さんは多く、今後もこの傾向は、高齢化の波に乗り、加速するものと考えられます」
Q「O脚などはどうでしょう?」
A「やや専門的になりますが、矯正できるものと、できないものがあります。が、患者さんから相談を受けるものの大部分は矯正可能なタイプです」
――――
 夕食=ソースカツ丼など。



2005年7月18日 (月)

扇ガ谷を歩く

 午前7時頃起床。
 学院では、逗子直営院、院長の田中さんによるセミナーが行われる。月1回の3ヶ月シリーズ。今日はその1回目。
 今回のシリーズは、治療院「経営」方面にスポットを当ててくれるという。力強い。田中さんと逗子院の躍進ぶりは、学院ホームページの『探訪記』にもかつて特集したので、未読の方は是非。
 が、ボクは出番なし。ヒマを持て余し、急に思い立って鎌倉を歩く。もちろん観光客が来るような所へは行かない。逗子院を開業するにあたって鎌倉も候補地として考えていた頃があり、ずいぶんと歩き回ったおかげで、この界隈は詳しいのだ。
 扇ガ谷(おうぎがやつ)って、読者はご存じだろうか? 鎌倉の、北鎌倉・大船方面に広がる、古い住宅街である。山に切り込む多くの谷に沿って道ができているのだが、そのどれ一つとして山を越えられない。道の広がり具合が、まさに扇のようだ、と今日、歩き回ってみて初めて合点した。
 ホーホケキョが鳴き、窓を開けたどこかのお宅からテレビ中継の音が小さく聞こえる。人っ子一人――と言っていいぐらい人がいない。この辺りの一番奥に当たる海蔵寺にも行ってみるが、また誰もいない。
P1000001P1000002 切り立つ山の壁面のあちこちに、防空壕の名残かと思われる横穴が見える。リス発見。
 写真の中央の花は、絵の具で塗ったみたいだが、もちろんそうじゃない。どういうわけか本当にこの一輪だけ、こうなのだ。
 駅近くに戻る。とある大きな病院のはす向かいの2階、よっぽどここに開業しようかと思った物件は、また「テナント募集」の札がかかっている。確かおしゃれ小物の店か何かが入っていたと思うが。
 また、ここもいいなーと思いながら、家賃が高くて諦めた物件で、長らく自転車屋さんが入っていた所。こっちは事務所になっていた。若い人たちが忙しそうにしている風からは、何かIT関係の会社のようであるが、鎌倉にITですか?
 柔道整復の治療院だった1階店舗物件にはフラダンス教室かと思われる看板がかかり、その2階の英会話教室は昔のままであった。
 楽しい。午後4時から7時まで延々3時間、ほとんど休むことなく歩き続ける。
 夕食=ビーフステーキ、鮹の刺身など。



2005年7月19日 (火)

犬を拾う

2005_07_20_Caplio 通勤途中、品川駅前プリンスホテルの裏にて、犬を拾う。ぬいぐるみであるが。お心当たりあればご連絡ください。でないと、もらっちゃいます。
 担当の小梨さんからのメモによると、昨日のセミナーはよい雰囲気だった模様。参加者34人。確かに盛況だ。
 学院2年生の授業は、TOS(胸郭出口症候群)を終わる。整形外科学的な理解を得た上で、手技療法的アプローチについて説明、実技練習するという、いつものパターンを踏む。
 夕食=ソースカツ丼など。



2005年7月20日 (水)

実技テスト

 曇り。東京地方、久しぶりに30℃を切る最高気温の予報。
P1010024P1010002 学院1年生は、R1の実技テストのみ。いつもように公開である。
 ちょっと早く、午後8:30頃、学院を出る。
 夕食=おじやなど。



2005年7月21日 (木)

手根管症候群とは

 午前11時過ぎに遅出。
 以前、学校説明会に参加していただいたMさんから、EMで質問をいただく。
Q「10月の準本科に入学を希望しています。4月入学生と一緒に授業を受けると聞きましたが、ついてゆけるでしょうか?」
A「全く問題ありません。弊校では、10月からでも4月からでもゼロから始められ、かつ4月生と10月生が半年は机を並べられるよう、カリキュラムが組んであります。
 前期(4月から9月)の学習内容の上に後期(10月から3月)の勉強を積み上げようとするから、10月入学者が不利になるわけです。弊校の前期と後期は、内容が基本的に違うものになっています。具体的には;
前期:座学=臓器系、実技=ルーティーン
後期:座学=筋骨格系、実技=オーソドックス・カイロプラクティック
ということになります。
「ルーティーン」とは? 日本の現状に合わせた、筋肉の緩和操作を主軸にした手技操作の体系です。
 また「オーソドックス・カイロプラクティック」とは、アメリカのカイロプラクティック大学で教えられているような、関節操作を主眼とする、厳密な意味でのカイロプラクティック手技です」
Q「毎授業時のテストと期末試験、卒業試験があると聞きました。もし落ちた場合の再テストはいつでも受けられるものなのでしょうか? 私は仕事で時間の制約があるのですが、大丈夫でしょうか?」
A「何度でも、通るまで、受け直しをしてもらえます。受験の時間ですが、可能なら、毎日の授業開始前に設けている30分の専用の時間枠内でやっていただくのが基本です。が、まあ現実的には、仕事を持っていらっしゃる学生さんなども多くいらっしゃいますので、それ以外の枠を、適宜、作ってやっています。具体的には、昼夜間部の間の時間、あるいは夏や春の長期休暇期間中などです」
 では、Mさん、秋にお会いできるのを楽しみにしております。
――――
tekubiCTS 2年生の授業。ボクの講義は手根管症候群について。その基本的な病理は以下のごとくである。
 手根管とは、手首の掌側(しょうそく。手のひら側)部分の、腱(筋肉から続くスジ)が多く通っている部分である。屈筋支帯という、リストバンドのような、膜でおおわれている(カラー図中④)。手首をよく使う人、例えば一昔前のタイピスト、はこの部分によく炎症を起こす。これがいわゆる腱鞘炎である。
 腱鞘炎は痛くて辛いのだが、特に手根管内にこれが起きると、やはりここを通っている正中神経(カラー図中⑥)が圧迫される。正中神経は母指(おやゆび)から手のひらにかけての感覚と、運動を司る。結果、母指が使えなくなって、鉛筆、箸、カップなどを落としたり、手のひらがしびれたり、などという非常によろしくない症状が生じてくることになる(モノクロ図)。
――――
 夕食=久しぶりにポロロッカのソース鳥カツ丼弁当、温野菜サラダ、ウナギにぎり、ハーゲンダッツの小倉アイス、カルピスウォーター。カルピスウォーターって何故か最近非常に好きで、おそらく毎日、どこかで買って飲んでいる。



2005年7月22日 (金)

ボキボキとは何か? ①

20050605cap00320050605cap_004 午前7:30から30分ほど、久しぶりに池田山(東五反田5丁目)を散歩。「いいお宅」街である。ボクは子供の頃からずっと公務員宿舎(アパート)住まいだったので、こういうの、眺めているだけで相当幸せな気分になれる。
 これも久しぶりに一人で早朝、学院事務局にこもり、教材開発関係の仕事に精を出す。1年生の授業はCMTに入る。
 R2も、前回にテストが終わったR1も、筋肉へのアプローチであった。に対して、CMTはいよいよ背骨の関節へのアプローチであり、これこそあの背骨をボキボキッとやるやつそのものである。
 CMTとは Chiropuractic Manipulative Therapy の略であり、直訳するとカイロプラクティック(的)手技療法となる。「アジャスト」や「矯正」といった用語は、最近ではあまり使わない傾向にある。何故か?
 矯(たわ)めて正(ただ)す、というと、まずズレた背骨があって、それを正しい(つまり真っ直ぐな)状態に戻す、というニュアンスがある。が、これは今日のカイロプラクティックの病理・治効(治療の効果)モデルとは相容れないのだ。
 カイロプラクティックは何をするのか? ズレた背骨を真っ直ぐにする、のでは実はなくて、動きを失った背骨に正常な動きを与える、のだ。動きがつくと何かいいことがあるのか? いっぱいあるんである。続きは月曜の、次の授業の際にでも――。
 夕食=鳥の竜田揚げのタルタルソースがけ丼弁当(フルネームで)、うなキモ串(冷たいまま食べるのが、コリコリ感が残って美味い)、温野菜のサラダ、カルピスウォーター(水と1:1で割り、氷をたっぷり入れる)。



2005年7月23日 (土)

キケロとは誰か?

 涼しい! あれ、もう秋?
 20年ほども前に関わっていた劇団、ハーフムーンシアター、の主宰者であられるYさんから、新作のチラシを郵送でいただく。イギリスの作家ロバート・ホルマンの『雑草の生い茂る小道』。ボクが少し翻訳をお手伝いしたもの。吉祥寺シアターにて9月7日(水)~11日(日)。
 いや、観に行くんじゃなくて、出たいですねぇ、Yさん。駄目?
――――
 高田康成『キケロ』読了。ボクのような、(にわか)ローマおたくには嬉しい一冊。
 みなさん、中学の歴史や高校の倫理社会で、ソクラテス、プラトン、アリストテレスなんて習ったでしょ。古代ギリシャの偉い人たち、哲学者たちだ。しかしながらこの人たちの著作や生涯に感動しろって言われても、それは多くの人(特に現代の日本人)には、無理難題ってもんではなかろうか。が、キケロは、結構、面白いぞ。
 塩野七生さんの『ローマ人の物語』の文庫版だったと思うが、そのオビに「政財界のオジがハマる」なんて書いてあったのを見たことがある。それって、やっぱりオレもオジかと確認させられてしまうっていう意味で、ちょっとイヤではあるが、しかしさもありなん、とは思う。古代ローマ人と日本人には、似てる点が多い。だからピンとくるのだ。
 ローマ人と日本人は似ている・その①:風呂好き。
 カラカラ浴場なんて聞いたことおありだろうか。ローマに今も残る大きな公衆浴場である。こんなのが古代ローマ時代には、どこの街にもあり、一日の終わりにはみんなでいわゆる裸のつき合いを楽しんでいたらしい。これはまさに日本の銭湯の世界である。
 ローマ人と日本人は似ている・その②:小柄。
 早くから農耕を発達させたローマ人は長らく穀類を主食としていた。結果、北ヨーロッパで狩猟生活を営み、肉ばっかり食べていた人たち(ガリア人)より体は一般に小さかった。
 今でもイタリア人は、北欧人に比べれば小柄な人が多い。しかも日光の強い地域に住んでいたので毛も黒い。結果、容姿からしても、他のヨーロッパ人より、ボクら日本人には親しみやすい。
 ローマ人と日本人は似ている・その③:集団になると強い。
 古代ローマ時代の文献には、社会への貢献を力説する物が非常に強い。例えばキケロの『スキピオの夢』なんてのは、国に貢献した者だけが天国にいけるんだという、理屈も証明も無しの、無理矢理なお話である。善し悪しは置くとして、間違いなく日本人のメンタリティーに近い。
 ついでにいえば、古代ギリシャ人が尊んだのはむしろ「個」であり、「集団」ではない。結果、ギリシャはあれだけ優れた科学や思想を生み出しながら、国としては遂に大国にはなれなかった、と言われる。ローマ人は、この意味で反対だ。
 ローマ人と日本人は似ている・その④:基礎が苦手だが応用が得意。
 哲学や科学などの「基礎研究」についてはローマ人は、ギリシャ人に憧れるばかりで、弱かった。が、軍備、建築、道路工事などの実用的なものには強かった。結果、とにもかくにも小さな国から大国になった。
 これも「オジ」を惹きつける要因だろう。あ、(明治以後の)オレたちと同じじゃん、と。
 さて、そんなローマを代表する文筆家がキケロなわけで、ピンくるものが多々ある。だから面白い、のだろうと思う。やはり、専門の研究者ならぬ身には、自分に重ね合わせて考えられるネタがないと、ね。
 最後に一つ Warning (注意)。それでも『キケロ』は、『ローマ人の物語』を読んだ後でなければ分かりません。カエサルオクタヴィアヌスとの関係などは、常識扱いってことだろう、『キケロ』は説明してくれていない。が、そこら辺が分からなければ、同書の大半は分からない。
 面白いと人から言われて読んでみたら、さっぱり分からなかった。これはムカつく。また、面白いはずの物も、初めての遭遇でトラブルと、その後、見るのも嫌になってしまう。結果、大切なものをみすみす失ってしまうことになる。
 ボクとしては以上のどっちの状況にも、読者には、陥っていただきたくないんである。だから、悪いことはいわないから、おたくのアドバイスを聞きなさい。早く読みなさい、『ローマ人の物語』。
 夕食=あれこれ選ぶのも面倒くさくて昨日と全く、本当に全く、同じもの。



2005年7月24日 (日)

備えあれば

2005_07_25_caplio_004 北海道の方からEMでご質問を受ける。
Q「入校について検討しています。やはり一番の問題はお金です。地方から出て行きますので、お金の計算が必要です。学校の経費についてですが、授業料、入学金はわかりました。教材費などは、どれだけかかるのでしょうか」
A「2年通じて89,673円です」
Q「また、紹介の学生アパートより安い物件の紹介を受けることができるのでしょうか」
A「学院といたしましては、地元の不動産屋さんをご紹介しております。が、学院でアパートを直接紹介するということは行っておりません。安くていい物件があるかどうかは、時と場合によるということになってしまうと思います。一度、上京の折にでも、物件情報を眺めてみることをお奨めします」
――――
 北海道のような(?)涼しい一日。2年生の準本科の授業。
2005_07_25_caplio_005babuba その後、歩く。まず何となく、ほぼ目黒川に沿って目黒駅近くまで行く。町内会の掲示板に季節と時節を感じる。
 駅前商店街を抜けて山手線の内側に入り、自然教育園の前を通って、白金台に至る。
「このストリートがぁ、ずっとぉ、白金でぇ」
 ストリート!
「しろがねだい? しろかねだい? シロガネーゼって言うよね」
 いずれにせよ、白金台を歩く人々は白金をよく話題にするようである。白金台の女性をシロガネーゼと呼ぶのなら、五反田の男性をゴタンダンジと、これから呼ばないか、みなさん。五反田で待ち合わせる彼女をゴタンダーリン、五反田っぽいお父さんをゴタンダディーなんて、どうでしょう。
2005_07_25_caplio_012 自然教育園から都ホテルへ至る道は広々としていて気持ちがよい。ポロロッカ発見。五反田店より広そうだねぇ、今度買い物に来よう。
 ホテルの前から、竹中工務店所有の竹友倶楽部の左の小道に入ってみる。静かかつハイソな住宅街。三光起業と表札のかかったお屋敷は物凄く立派だが、人の気配は無し。
bbbc 高松宮邸前、東海大学の短大の前を経ていつもの通勤道に入り、五反田まで戻ってくる。3時間、歩き続け。
 夕食=また(五反田の)ポロロッカだが、牛焼き肉丼を初めて食べてみる。美味い。単品で鳥南蛮もつける。これも初めてだが、いい。
 ハーゲンダッツの季節限定品、パンナコッタ&ラズベリーをデザートに。これも美味い。
――――
 日高義樹『アメリカの世界戦略を知らない日本人』を読む。これからますますアメリカが強くなるゾ、という本だ。
「多くのヨーロッパの人々は口を開くとアメリカ人を軽蔑してヨーロッパから脱落していった人々の末裔だといいたがる」

「エネルギーを持った、そして力のあるヨーロッパの人々は大西洋を渡ってアメリカ人になった。アメリカ人というのは理想を求め自分のやりたいことをやり遂げてしまう、一方、ヨーロッパに残った人たちは力のない保守的な人々なのである」
 また、他国の侵略やテロには自分で備えなさい、という本でもある。日本がソ連に取り込まれて共産国になっちゃあマズいってんで、アメリカは日米安保条約で日本を守ってきた。が、そのソ連がいなくなった今、一人勝ち超大国となったアメリカに、日本を守ってやる動機は薄い。



2005年7月25日 (月)

ボキボキとは何か? ②

 午前9時出勤。
 1年生の授業、実技部分は、ついに頚椎のCMT操作の練習に入る。ボキボキっと音を立てて背骨を操作する、あの手技は背骨に動きを与えるものだ、というところまで①で書いた。背骨に動きがつくと、どんないいことがあるのか?
 いいこと①:和痛。
 椎間関節(背骨の関節)からは、固有覚という感覚が大量に脊髄に入る。固有覚とは? これは普段あまり我々の意識に登らないが、関節の位置と動きに関する感覚である。これがあるからこそボクらは、様々な動作や姿勢を調整できる。
 さてこの固有覚には、脊髄(背骨の中を通る神経の束)内でゲートを閉じる強い作用がある。ゲート? 門という意味だが、脊髄内の膠様(こうよう)質という部分にあって、侵害刺激(痛みの感覚)が脳に上がってゆくのを許したり(ゲート・オープン)、許さなかったり(ゲート・クローズ)する。これが有名なゲートコントロール理論というやつである。
 というわけで、椎間関節の動きが悪くなるとゲートが開きっ放しになってしまい、痛みが増す。椎間関節に適切な動きが回復されれば、これと反対のことが起きる、という寸法である。
 いいこと②:癒着の剥離。
 腰痛、肩こり、なんであれ、背骨付近の痛みも長期(慢性)化すると、その辺りの椎間関節内に線維組織による癒着が生じる。線維組織とは体中のどこにでも見られるもので、例えれば糊(のり)だね。肺にせよ心臓にせよ、下に落ちてしまったり、上に押し上げられたりしないのは、線維組織による「位置決め」が効いているからである。
 さて上のような癒着は椎間関節の動きを阻害し、どうも首が回らない、腰がスムーズに動かない、といった訴えの原因になる。と同時に、①で述べたようにゲートがオープンしっ放しになるせいで痛みも増し、障害は悪循環に陥る。
 CMT(ボキボキ)は、このような癒着を剥離(引き剥がすこと)するための非常に強力なツールとなる。
 いいこと③:交感神経の抑制。
 交感神経と副交感神経を合わせて自律神経という。自律神経は、人体のありとあらゆる部分(皮膚だろうと、筋肉だろうと、内臓だろうと)にまんべんなく張り巡らされた神経のネットワークである。
 体も心も活発に動き、場合によっては興奮してハイな状態になっている時、あるいはイライラしている時、ボクらは交感神経優位の状態にいる。つまり交感神経とは興奮モードに体をもってゆくシステムなのだ。
 一方、寝ているときや、起きていてもボンヤリ、あるいはリラックスしている時は、副交感神経が優位になっている。副交感神経は、交感神経と全く反対に、体を安静モードに維持する。
 さて、ボクらの患者さんの大部分は交感神経優位である。痛くて辛くてどうしようもなくなってしまった方が多いわけなのだから、そりゃそうでしょう。そんな患者さんの交感神経を静め、自律神経のバランスを回復する効果がCMTにはあるのだ。
 ちょっと難しかった? まあそれはそれ、どういう目的で手技を行うのか分からないままでは気合いも入らないでしょうから説明しました。が、とりあえずこれからしばらくは、大切なのは実技ですね。しっかりできるようになるまで、時間をかけて練習してください。
――――
 卒業生のUくんが来て、昼間部の講義開始前15分ほど、「宣伝」をやってゆく。何の宣伝かというと、現在自分が就職している治療院『吉田カイロプラクティックオフィス』の、である。
 夕食=鳥カツ重など。



2005年7月26日 (火)

肩のトラブル

 台風7号が近づく雨の中、午前10:30出勤。
supraspinat 2年生の授業は、肩関節のトラブルについての講義。肩のトラブルは主に、①変性疾患、②スポーツ障害に分けられる。
 ②は野球選手が肩を壊すとかいう、あれである。どだい無理な力をかけることが原因であるから、安静にしていれば治るし、無理を再開しない限り再発もしない。臨床的には、ごく一部の専門家にとっての場合を除き、あまり問題にはならない。
 ボクらが遭遇することのより多いのは①である。変性疾患とは、年をとって肩付近の組織の剛柔性が失せ、切れたり、腫れたり、はたまた体がそこを補強しようとするせいで石灰が沈着してしまったり、することだ。
 障害を起こす組織としては、棘上筋という筋肉が上腕骨に付く直前の、腱の部分が圧倒的に多い。肩峰、鎖骨、上腕骨頭によって圧迫され、非常に狭苦しい思いをしているからである。狭苦しい思い」をすると何がいけないのか?
 その①:圧迫を受けるわけで、動作の際、あちこちに擦り付けられて切れる可能性がある。
 その②:血の巡りが悪くなり、組織が栄養不足、酸素不足に陥りがちになる。結果、長い年月のうちに、組織が硬く、切れやすくなる。これこそが組織の変性もしくは退行変性と呼ばれる現象である。
 台風は東に逸(そ)れ、千葉の鴨川に上陸する。シーワールドのシャチがさぞ驚いたことであろう。東京は思ったほどの雨も風も無しで、ちょっとつまらなかった。
 夕食=鰻丼など。



2005年7月27日 (水)

歩く 大船→戸塚編

 いわゆる台風一過。朝からカラリと晴れ上がる。
 JR横須賀線の大船駅から戸塚駅までを、柏尾川沿いに歩いてみる。工場地帯である。通勤電車から見ると、立ち並ぶ工場の外壁は結構きれいで、川に沿って遊歩道がある。新たに工場を建てている付近は視界も開け、人もあまり歩いていなそうで、なんか非常にいい感じなんである。
2005_07_27_caplio_020 実際に行ってみると、しかし、一見してメンテナンスの悪さが目立つ。ブロック敷きの路面は、落ち葉や枯れ草に覆われ放題。できた当初は立派だったと思われる木製のベンチは皆朽ち果て、あちこちにキノコが生えている。川縁はゴミの不法投棄が目立つ。
 戸塚駅の周りも、初めて、歩いてみるが、駅前商店街のアナウンスがしきりに
「戸塚の街から暴力団を無くしましょう」
と訴えている。加えて実に今日は暑かった。というようなことで、歩けば歩くだけ滅入ってきちゃって、帰り着く頃までには、身も心も、イヤな感じの疲れでいっぱいになってしまいましたとさ。
 街、路、人の体、みな同じだ。メンテナンス(お手入れ)がなければ、当初の作りがいくら立派でも、荒れてしまう。逆もまた真なり、のはずだ。そこそこのモノでも大切に使えば、味わいも出よう。
 夕食=豚のベイビー・バック・リブ、パエリアなど。



2005年7月28日 (木)

五十肩とは

 午前10:30出勤。
 学院2年生の授業は五十肩について。五十肩とは読者もよく聞くだろうが、これ、果たして何なのか?
 四十肩と五十肩は別の障害ではない。同じものにたまたま四十代にかかれば前者、五十代にかかれば後者で、これを呼んでいるだけである。いずれにせよ正式には癒着性関節包炎あるいは肩関節周囲炎と呼ばれる。
 とにかく40、50代の人が、ある頃から肩に違和感を覚える。2~3ヶ月かけて徐々に肩が上がらなくなる。そのうちあらゆる方向への可動性制限(動かない!)が起き、この状態が半年ほど続く。無理に動かそうとすると激痛が走るので、整髪、着替え(背中のファスナーの上げ下げ)、電車のつり革につかまること、車の運転などが著しく制限され、日常生活に甚大な影響が出る。
 おもしろいことに、その後、また2~3ヶ月ほどかけてであるが、可動性が回復し、そのうちすっかり元通りになってしまう。治療も何もしなくても、である。
 原因は? 自然治癒する理由とともに、はっきりしたことは未だに分かっていない。時期が来れば勝手に治ってしまうわけであるから、研究者もあまり気合いが入らないのだろう。が、おそらく以下のような仕組みによるものだろうとは考えられている。
 肉眼では見えなくても、仮に顕微鏡で見たとすれば見える、そんな顕微鏡レベルの組織損傷を顕微損傷(マイクロトラウマ)という。まず棘上筋(7月26日の記述参照)の腱に、この顕微損傷が生じる。すると体がそこを補強しようして、石灰化が起きる。石灰化とはカルシウムが付着することだ。
 カルシウムは骨の主成分なわけで、骨のあの強度というのはカルシウムあってこそなんである。だから補強の素材としてはカルシウムは効果的なのだ。が、これが裏目に出る。よって来たカルシウムが、そこらへんの組織(骨、腱、関節包など)癒着させてしまう。
 通常、過剰なカルシウムは血液に回収され、体に吸収されるものである。が、40~50代になると、いわゆる代謝が衰える。代謝が衰える、とはつまり、新しい組織も作られなければ、古い組織も回収されない、ということだ。ということで、これが、40歳以降に上のような状況が生じやすい理由である。
 夜間部の学生さんには年輩の方も多く、必ず何人か、五十肩の経験者を見つけることができる。いかに辛かったかということを語っていただくと大いに講義が盛り上がる。今晩の語り部はFさんと、Nさんにお願いした。ありがとうございました。
 松浦さんのワンポイント実技コーナーは、ここまでの総復習。



2005年7月29日 (金)

五十肩の治療とは

 五十肩の話の続き。同障害は3期に分かれる。
 肩に違和感を感じてから3ヶ月ほどが痙縮期。肩付近の癒着(石灰化)が徐々に進む時期である。
 その後、6ヶ月ほどの拘縮期が来る。癒着がピークに達し、あらゆる方向に肩の動きが制限される。制限に逆らって動かそうとすると激痛が走る。動きの制限と、痛みの度合いは、しかし、期間中ほぼ一定である。
 さらにその後で、回復期が来る。3ヶ月ほどかけて徐々に癒着が剥がれ、これが終わる頃にはケロッと治ってしまう。
 さて、そんな五十肩であるが、どう治療するのか? これは基本的には「動かす」ということに尽きる。期を問わず、である。痙縮期に動かせば、癒着をひどくしないで済む。拘縮期、回復期に動かすことは、より早く癒着を剥離することにつながる。要するに、なにもしなくても、積極的に動かしても治るは治るのだが、後者の方がより早く治る、ということになる。
codman 患者さんが自分でやるにはコドマン体操と呼ばれるものが勧められる。肩を動かしたいのだが、それが痛いわけで、痛ければ自然と、肩周りの筋肉が動きに抵抗する。だから痛い肩をまたぐ筋肉には期待しないで、別の力を使って動かすのだ。
 で、コドマン体操は、アイロンなど、2~3kgの重しを使い、その慣性力(揺れ)を使う。何のことはない、図のようにブラブラと腕を揺らすのを際限もなく続けていればいいのだ。どっちの方向に? 五十肩は「あらゆる」方向に運動制限が起きるのだから、動かすのも「あらゆる」方向に、である。
 院内の施術も、基本的には、いろんな方法で肩を、多少痛いのを我慢して、動かさせていただくというものになる。「いろんな方法」は種類があり過ぎて、ここでは紹介できない。が、既に述べたような障害の性質上、ある程度継続的に通院していただくことになってしまう。
 一発で五十肩を治せないのか? 残念ながら、それはできない。回復期に思いっきり動かすと、時に一発で治ったように見えるということはあるが、それはただでさえ剥がれかかっていた癒着を一気に歯がしたに過ぎない。治る時期に来ていたものに駄目押しをしてやっただけである。
 カイロプラクティックだって理学療法の中の一アプローチに過ぎない。どんな障害でもそうなのだが、基本的な、地道な作業の積み重ねで撃退する以外にない。何でも一発で治す、なんていう治療法や治療家には多くを期待しない方がよい。
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 つきなみなことをあまり言いたくないが、でも暑い。品川駅近くの杜の公園を通り抜ける。と、おじさんがFolly 1(今年5月13日のブログ参照)の池の中の小石を洗っている。メンテナンスがしっかりしてるねぇ、さすが。
 夕食=ベトナム風生春巻きなど。



2005年7月30日 (土)

アビエーター

 2年生は夏休み前の最後の授業。まず五十肩への手技療法的アプローチのまとめ、および実技の練習。
 その後で講義は先天性股関節脱臼に入る。先天股脱と略される。「先天」性と呼ばれながらも、実はこれは「後天」的に生じる障害である。そのことを含む概論で、今日は、終わる。
 キーツ『ハワード・ヒューズ』を、やっと読み終わる。映画『アビエーター』のモデルになったアメリカの実業家、飛行家、映画製作者、資本主義の申し子といわれた人の伝記。
 精進とか努力といったものが、その生涯のどこにも見いだせない。専門教育など一切受けていないのに、飛行機の設計も操縦も、映画の制作も、投資も、法廷闘争も、やっているうちにできてしまう。いわゆる天才である。
 できてしまうだけに、何にでも口を出したがったらしい。飛行機のボルトの形状、映画の編集、はては従業員の食事の内容から、専属の理髪師の剃刀の当て方まで。あ、イヤだな、こういうボスって(ちょっと自戒)。
 晩年(1976年没)は麻薬漬けのような状態だったらしい。らしい、というのは、その私生活が公にならないことで有名な人であったからだ。脅迫性障害を病んでいたともいわれる。脅迫性障害とは、例えば手の汚れが気になって、いったん洗い出すと止まらなくなり、皮がむけるまでこすったりしてしまう精神障害の一種だ。
 細部へのこだわりと脅迫性障害は一直線につながる。その性向を、上手く乗りこなせば立派な職業人となり、社会的にも評価されよう。が、これをマズく扱っちゃうと、周囲と軋轢を起こし、場合によってはアルコールを含む薬物依存となってしまう。両刃の剣というやつだ。
 夕食=鳥カラ丼、サラダ、ヒレカツ。ヒレカツは初めて、ポロロッカのお総菜コーナーで、買ってみたが、ウーン、ロースの方が好きですねぇ。



2005年7月31日 (日)

3種類のCMT

 午前8:20出勤。いよいよ学院の夏休み前の最後の授業は、2年生の準本科。次回は9月4日です。水の事故などに巻き込まれぬよう、皆さん、気をつけてお過ごしください。
 午後4時にはボクの出番は終わり、松浦さんにタッチ。準本科教室のりらっくすステーションから学院本校舎へ移り、1年生の授業に少し顔を出す。見学者の方、一名。セミスペシフィックCMTの練習である。
 CMT(Chiropractic Manipulative Therapy=カイロプラクティック手技)は、①スペシフィック(特異的)、②セミスペシフィック(半特異的)、③アンスペシフィック(非特異的)の3種類に分かれる。
 伝統的に伝えられてきた手技の多くは①である。ある特定の椎骨だけにコンタクト(接触)し、それだけを動かす、というもの。いわゆるストリクト・スタイルである。細かな約束事も多い。
 ③は理学療法の世界などではむしろ好まれるもので、個々の椎骨を区別しない。例えば頸椎なら、7個の椎骨のつながりを一つのユニット(単位)とみなし、回旋なり屈曲なりといった動きを、ユニット全体に及ぼす。
 で、②は上の中間である。また頸椎を例にとるなら、1~3番を上位、3~5番を中位、5~7番を下位と、3つの部分に分け、そのそれぞれについて動きを診(み)、バネの失われている部位に対して操作を行う。
 さてカイロプラクティックは趣味ではなくて仕事である。①②③のうち、いったいどれが一番「効く」のか? ケースバイケースであるとしか言えない。①が著効を示す場合もあれば、③で充分、いやむしろ③の方が効果が高い場合もある。が、現実の臨床で一番多く使うのは、といえば②であろう。
 ②のいいところは、まず患者さんにとって①ほど「痛く」ないという点である。①は狭くコンタクトをとるため、よほど上手い術者にかかればもちろん別だが、どうしても患者さんとしては楽に受けることができない。また、①ほど細かい約束事がない分、初学者にとっては、適切なスピードとタイミングを体得する上で非常に有効である。
 というわけで、夏休みをまたぐことになってしまいますが、セミスペシフィックCMT、通称セミスペを、しっかり練習してください。くれぐれもインストラクターの指示に従い、誰も怪我などすることなく学期を終えられるよう、心がけましょう。
 オリバー・サックス『左足をとりもどすまで』を読む。CMTの治効理論を学ぶ上で、固有感覚というヤツの理解が不可欠である。固有感覚を扱った一般向け読み物として面白い、らしい、と聞いて、学生に勧めていた本だが(白状します)自分は未読であった。
「喜びにあふれる生命と灰いろの理論とのあいだに深淵が存在する必要はない」(273ページ)
 そういうことですよ、皆さん。勉強は厳しく、しかし仕事は楽しく。そして患者さんにはあくまで優しく。
 夕食=パエリア、ポークチョップなど。